第109章 対策②
「エレン・イェーガー15歳、訓練兵団所属です。生家はシガンシナ区で、父親のグリシャ・イェーガーは医師です。私の母もイェーガー先生にお世話になっていた関係で、私も医師免許をとってすぐにイェーガー先生の元で働かせていただき、そこで彼に出会って一緒に暮らすようになりました。彼が9歳の頃から1年程度でしたが、その中で特に不思議な力があるなどは一度も感じたことはありません……。」
「ナナの知る限り、普通の少年ってこと?」
「――――はい、一緒に暮らしていた中では。」
「――――巨人の力とは、ある日突然開花するようなもの、なのか……?それとも……なにかきっかけが、あったのか――――……。」
エルヴィン団長は顎に手をやったまま、興味深そうに思考する。
ミケさんはいつも通り腕を組んだまま俯き、リヴァイ兵士長は足を組んだまま俯いている。
「ねぇナナ、例えばエレンの家族全体で違和感があったり、伝承しているような事柄があったりもしなかった?」
「――――明朗な母親と……一緒に暮らしていたミカサも……なにか秘密を継承していっているようには見えませんでしたが、父親は気になることがあります。」
「――――外の世界の事を知るワーナー氏のノートに、エレンの父グリシャ・イェーガーの名前が記されていたのは、やはり偶然ではないと思えるな。」
私の言葉に続けるように、エルヴィン団長が口を開いた。
そう、私も同意だ。
ほぼ確実に無関係じゃない。
壁が破られてから―――――、イェーガー先生がエレンにほんの数分会いに来て、また姿を消したこともおかしい。
「はい、私もエルヴィン団長と同意です。もともとはエレンではなく、エレンの父が何かしらの能力を持っていて――――、それが、彼に引き継がれたのかもしれないと、そう思います。」