第109章 対策②
“疫病の発生は、なにも奪還計画のような大掛かりな計画が実行されたときだけじゃない。――――例えば、また壁が破られて――――、大勢が食われた時にも同じことが起こる。“
そう言ってロイが兵団本部と共に有事の際の対応方法について議論の上、駐屯兵団の師団長の面々にその内容を講義した数か月前。間もなく、今回の”有事“は起こった。
まだ師団長から確立した一つの業務として各兵団内に浸透出来ている様子は皆無だったため、ロイが来てくれて――――、指揮を執ってくれてこの局面を乗り越えられたんだと思う。今のところ疫病と思わしき症状を訴える兵士も市民も出ていない。
ロイは今回の指揮内容や兵士の動き、それと物資の手配先や移送手段等々まだまだ詰め切れていない部分を明確にするために、また研究所に疫病が発生しうる、まさに危機的状況であったトロスト区内の情報を提供するために、王都に戻った。
ある日の夜、対策本部の一室を借りて調査兵団の幹部会は行われた。
「エレンとの面会がようやく赦された。」
エルヴィン団長の一言に、私はホッと胸を撫で下ろした。
リヴァイ兵士長も言っていた。エルヴィン団長が必ずエレンを調査兵団で預かれるように手を尽くすはずだと。まずはその足掛かりになる、エレンとエルヴィン団長・リヴァイ兵士長の面会が叶う事が何よりの一歩だ。
「面会の時間も限られているし、更には間違いなく憲兵の見張りもつくだろう。そこでだ、ナナにエレンの事をなるべく事前に聞いておきたい。」
「は、はい……っ……!」
私はこれから人類の命運を左右するであろう、巨人の力を宿したエレン・イェーガーという少年について知っている事を話した。