第108章 対策
更に翌日。
今度は私たちの出番だ。
疫病による二次被害を防ぐため、遺体の回収と消毒作業にあたる。ロイは最初トロスト区内には入らず、壁上から指示のみをすると言っていたのだけど――――、私が区内に入ると言うと、自分も、と結局は一緒に遺体の回収現場に赴いた。
「――――ひっどい、匂い……。」
「うん………。」
「僕は今初めて、巨人というものの存在を憎いと思ってるよ。」
「――――怖いなら、嫌なら、壁上にいても良かったんだよ?」
私がロイを小さく気遣う言葉をかけると、ロイはいつになく真剣な眼差しで答えた。
「――――いや。疫病で罪もない多くの命を失わせたりしない。これは、僕が引き受けた戦いだから。」
「――――……ロイ……。」
「――――非情なことも、倫理に反することもしてきた僕の償いであり―――――、曲がりなりにも医術を心得ている僕の、意地だ。―――――父さんと母さんと姉さんとハルに……恥じないように、やり抜くって決めてる。」
ロイの横顔が、こんなにも強く頼もしく見えたことはない。
私が変化していくのと同じように、ロイもまた変化していく。あの日あの時、苦しかった時に向き合って、家族としての関係性を取り戻せて本当に良かったと思う。
「―――――あなたもまた、私の誇りだよ、ロイ……。」
「――――……大げさだな。」
「本心だもん。」
「さぁ、兵士の皆さんに任せるだけじゃなくて―――――僕も貴重な経験だと思って、あらゆる状況を記録して研究室に持ち帰ってやる。」
「うん……。」
その地獄絵図のような街で、ロイは疫病の蔓延を防ぐための処置の指示と現状の記録を、私はこれからの人類にとって糧になる情報が潜んでいないかを調べる。
私とロイはそれぞれの役目を果たすことに没頭した。