第108章 対策
それから、掃討作戦を壁上から見守った。
絶えず壁上固定砲が火を噴き、壁側に群がる巨人は殲滅した。けれど壁側に寄って来ない巨人がまだ何体かうろついている。
「――――やるか。」
『はいっ!』
リヴァイ兵士長の小さな合図で、精鋭班―――――リヴァイ班は壁上からトロスト区に降り立った。
各兵団の中でも最も巨人との戦闘実践経験が豊富な調査兵団の、さらに人類最強のリヴァイ兵士長が率いる精鋭班による掃討作戦。訓練兵の一部も、その実力を目の当たりにしたいのだろう、たくさんの兵士が壁上からその様子を見守っていた。私もその内の1人だ。
彼らと一緒に戦っているということが誇らしくなるほどに、無駄がなく統率がとれた体制。
各々が最適な判断をして動いているのに、まとまりがある。
今日が初めての編成と、誰が思うだろう。
「――――すごいな………。」
それぞれの動きを目で追う。
距離をとっていても、リヴァイ兵士長の意向をちゃんと理解して動いている。それはもう鮮やかに、巨人の脅威などなかったかのように討伐をしていく。
けれどもっとも目を奪われるのは――――、あの人だ。
リヴァイ兵士長。
彼の戦う姿は、心臓を鷲掴みにして握りつぶされるような圧倒的な昂奮をもたらす。
まるで赤子の手をひねるように簡単に、自分の何十倍もある巨人を下す力。
そしてそれだけでなく、部下を鼓舞し最適に動かし結果を出す力。
人を惹きつける力。
しばらくその圧倒的な美しさと強さに見惚れていると、もう残すところは捕獲対象の2体だけになったのだろう、ハンジさんとモブリットさんも捕獲のために区内に降りた。
あっという間に2体の巨人を拘束し、ハンジさんが興奮のあまり、食いつかれそうになるほど捕獲した巨人に近づく度にモブリットさんが冷や汗をかきながらハンジさんを引きはがすという想像通りの光景を壁上から見て、私は安堵の笑みを零した。