第108章 対策
かき集めた兵員は約30名。
トロスト区を9つに区分し、3~4名の班でエリアを決めて遺体の身元割り出しと共に回収、火葬までの手筈を説明する。
もちろんこの任務にあたる兵士達への疫病感染も無いとはいえない。口元を布で覆い、手袋をつけて定期的に消毒をすることや、疫病の発生しうる環境などの説明と、それを防ぐための対処法を教えた。
その中に、一際沈んだ顔の彼がいた。
思わず私は講義を終えてから声をかけた。
「――――ジャン君。」
「――――………ナナ……さん………。」
「無事で良かった。あの時は―――――、リエトを助けてくれて、ありがとう………。」
「いえ………。ナナさん、驚きました……。医者、なんすか……?」
「そう。元々はね。今はただの――――調査兵団の一員だけど。」
「そう、すか……。」
ジャン君はいつになる呆然と、覇気のない顔をしている。無理もない。兵団に所属してからする経験よりもはるかに残酷な経験をしたんだから。
「――――なんで、医者だったら………王都でぬくぬくと暮らせたのに―――――……。わざわざ調査兵団に入ったのか………聞いても、いいですか……?」
ジャン君は何かと葛藤している。この後の所属する兵団を、迷っているのか………。目の前でどうやって人間が巨人に食われるかを見てしまった彼が、調査兵団を選ぶことはないかもしれない――――。
そう思いながら、私の入団動機を話した。