第108章 対策
王からの勅命は、“トロスト区に一日でも早く再入植できるように”というものだった。それを実現するためにあらゆる手段を講じる。
その中に、巨人の掃討と疫病蔓延防止策も含まれている。トロスト区の避難民を別の街で養うにも限度がある。また、早くトロスト区に民間人を戻して――――破壊された家屋を、街を復興しなくては、産業・流通面でも国全体にとって大打撃になる。
急遽対策の本部が設置され、私とロイはそこに赴いてピクシス司令に掃討作戦後の処理方法について提案した。ピクシス司令はそれを快諾し、駐屯兵団の一部兵員と訓練兵団の生き残った兵士達を配置してくれた。
明日、掃討作戦と同時進行で私たちは明後日に急務で進める街の遺体処理と疫病防止策の実施についてその概要を実務にあたる兵士達に教えることになった。
ミカサとアルミンは未だ聴取が続いているためこちらには参加できないらしい。酷い扱いは受けないとは思うけれど―――――、彼らのこともまた、心配だ。そしてエレン―――――。どこにいるの、無事?顔が見たい。そんな想いを押し込めて、ロイと向き合って明日の準備にとりかかる。
「―――――うん、班編成もこれでいいや。ロイ、そっちはどう?」
「兵員分の手ぬぐいと手袋、エタノール類はボルツマンさんに依頼してきたから。明日には着く手筈にしてくれているし、物資は何とか足りそうだね。遺体を焼却する場所の確保はピクシスさんが手配を進めてくれるって言ってたし――――」
「ボルツマンさん……昨日話して明日着で手配してくれたの……?」
その言葉に驚いた。それに、瞬時にボルツマンさんに的確に物資を依頼してからここに来てくれたロイの判断力と行動力にも。
「王政に貸しを作れるチャンスだからね。若干の口添えは約束した。僕はどこかのタイミングで兵団と王政の偉い人に、ボルツマンの厚意だ、と念を押さなきゃならない。」
「ああ……さすがロイ………。そこまで頼める?」
「お安い御用。」