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【進撃の巨人】片翼のきみと

第108章 対策




その日の夕方、ロイが王都から来てくれた。

昨日時点で手紙を早馬で届けたからだ。

まずはその現状をロイに把握してもらうために、リフトに乗って壁上へ連れて行く。壁上からトロスト区の現状を見下ろしたロイは、青い顔で絶句した。



「――――あれが、巨人………。」

「――――そう………。」

「――――気持ち悪い……。」



ロイは巨人を見た事はおろか、ウォール・シーナを出たことがない。そんな彼が私のお願いだからとはいえ、ウォール・シーナを出て壁を越えて―――――今巨人と相対する。

そんな行動を起こしてくれるようになったことにも、小さく私は喜びを感じていた。



「あれ、なんだよ……。」



ロイが嫌悪を顕に眉を顰めて、団子状になった遺体の山を指さした。



「――――あれは……巨人が人間を食べ過ぎて、吐いたあと。」

「消化しないの…?」

「ほとんどね。だって栄養を取るために食べてるんじゃないもの。巨人の活動エネルギーは諸説あるけれど、日光から得ているとされてる。」

「………じゃあなんで人間を食う必要があるんだよ。」

「さぁね……。私は、この巨人は殺戮兵器として意として創られたものじゃないかって、思う……じゃないと自然の摂理に反する。生きるために他の命を摂取するんじゃない、命を奪うだけの行動が赦されてたまるか……!」



壁上で強い風が吹く中、ロイは口元を覆っていた布を指でぎゅっとつまんだ。目元しか見えないけれど―――――その表情は怒り、不安、焦燥、嫌悪……およそ負の感情と思わしきものが殆ど含まれた、そんな表情で街を見下ろしていた。





「――――姉さんも、あそこで戦ってたの……?」



「うん……微力だったけどね。」



「―――――………。」



「ちょっとは見直した?いつまでも弱い私じゃないんだって。」





私が冗談めかしてふふっと笑って見せると、ロイは小さく何かを呟いた。





「―――――弱いままでいれば、いいのに――――……。」



「ロイ?」





ロイの言葉は強い風に攫われてしまって聞こえなかった。

私が聞き返しても、小さく首を横に振るだけで彼は黙ってしまった。

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