第107章 肯 ※
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―――――わたしも、抱っこ、して……ほしい……。
私は笑顔でお父様に抱き上げられて笑うロイを見ていた。冷えた笑みが仮面のように貼りついていて、口は動かせない。心の奥底で芽生えた小さな我儘を、分不相応として押し殺した。
どうしたら認めてくれる?どんなに頑張っても、ロイに向けるその優しい顔は私には向けられない。
どうすれば、お父様は喜ぶの?
私を褒めて、抱き締めてくれる?
「女が医学など学ばなくていい。」
「せいぜい地位のある男に嫁げ。」
私が女の子だから、愛してもらえない。
認めてもらえない。
男の子だったら―――――、ロイみたいに、お父様を裏切らないと信じてもらえたの?
それとも、私が―――――私だから悪いの……?
違う、そんなはずない。
きっとそうだ、女の子だから―――――、お父様が私を蔑むのは、お母様と同じ“女”の子だから。仕方ないんだ。
―――――好きで、女の子に生まれたわけじゃない。
だから、私のせいじゃない。
「――――――………。」
苦しくて、ぱち、と目を開けた。
薄く朝日が差し込んでいた。
―――――夢か………。
あんな残虐な画をたくさん目の当たりにして、血まみれの夢を見なかっただけましかな……。でも、決して心地いい夢ではなかった。額まわりに嫌な汗がじっとりとまとわりついている。
身体はぽかぽかと温かい。
私を守るように、慈しむように大切に抱いている腕の主は、やはり大変お疲れの様子で寝息を立てている。