第107章 肯 ※
弾む胸と、ナナの噛みしめても時折漏れてしまう小さな嬌声にまた昂ぶりながら、ナナのことは身体の中までも全て知りたくて、全て俺の仕様にしてしまいたくて、奥の形まで――――熱まで確かめるように深く繋がる。
最奥まで腰を打ち付けると痛いのか、ナナの目の端から涙が飛ぶ。
「―――――痛い、か……?」
「ううん……、痛く、ない……。」
「嘘だろう……涙が出てる。」
ナナの目じりを指で拭って抽送を弱めると、ナナは切なげに眉を下げて俺を見上げた。
「――――あのね。」
「ん………?」
「私、女の子でよかった。」
「――――………。」
「こうして、エルヴィンに愛されて、求められて――――――受け入れることができて、嬉しい……。」
「――――………。」
「これはね、その涙だから――――大丈夫。もっと、して……?」
ナナの両手が、俺の頬を包む。
その愛してやまない大きな瞳に俺が映っている。
もう何度こうして君を抱いただろう。
それなのにこの熱情は増すばかりだ。
「―――――言葉に、ならない……ナナ………。」
「うん、言葉は―――――いらないね……。」
月が傾く。
明日のことなど、今はもうどうでもいい。
ただひたすらに言葉もなくキスをして、身体を繋げた。
――――まるで残酷なこの世界から―――――血の匂いが充満するこの夜から逃避するように。
案の定体力ももう残っていなかったのだろう、ナナは途中で達したと同時にかくん、とそのまま眠った。
1人でゆっくりと眠った夜は、決まって俺が今まで死なせてきた兵士達が血に塗れた様子で夢枕に立つ。
―――――酷いときは、父も。
だから眠るのが好きではない。眠らなければいけなくなれば眠る。そんなものだと思っていた。
けれどナナを抱いて眠ると、不思議と幸せな夢を見る。それは彼女の体温か匂いかがそうさせるのか。
たった一瞬でもナナを抱いて眠る時間のほうが何倍も安らぐ。眠ることが怖くない。
寝ても覚めても、君は俺を虜にするんだ。