第107章 肯 ※
――――――――――――――――――――
トロスト区に戻ってすぐ、兵団幹部がトロスト区へ駆けつけての緊急会議が行われた。明日以降もエレンの身柄についてや、今後のことでしばらくは身動きがとれそうにない。
私が帰還した時にはナナの姿はなかった。
負傷した人々の治療に、今度は調査兵団のナナから一人の医師のナナとして避難先で走り回っていたそうだ。
ハンジやミケに調査兵団を任せて帰還させ、明日会議には当日の状況を知るナナとリヴァイにも同席させる。ナナとは結局会えないまま日が変わり、無事だと人づてに聞いてはいたものの、心配でたまらなかった。
私が宿に戻った時間はもう明け方に近い深夜で、なるべく物音を立てずに部屋に入ろうとしたのに、隣の扉が遠慮がちに開いた。
そこからナナの顔がちらりと見えた途端、我慢できなかった。
その身体を抱き締めて、ちゃんと腕の中で声を聞きたい。
その温もりを、生きている証を実感したい。
そう思いながら気付いたら――――、ナナをベッドに押し倒していた。
月明りの下でもわかる、数々の傷跡。
そしてこんな時間まで眠れないほど、怖かったのか、心を痛めたのか。色んな感情が制御できず、唇を合わせた。
一度触れてしまえばもう、それは止められない。
俺の身体を気遣って「だめ」と拒むが、ナナも相当疲れているはずだ。少しの時間でも眠らせてやらないと、と思う反面、“いつ失うか分からない恐怖” を、 “明日ナナが死んでも不思議じゃないという現実” を目の当たりにした俺は彼女を欲した。
俺が求めるとナナは拒まない。
それどころか―――――うっとりと、快楽に飲まれた恍惚の表情を見せる。
それがたまらなく俺の欲望を正当化させる。