第107章 肯 ※
「――――どんどん溢れてくる。淫らだな、俺の――――お姫様は……。」
口から指を引き抜いて、腰を打ち付けながら―――――彼の望んだ通り、“繋がっている”場所をまじまじと見降ろしては、時折色欲に塗れた目線を私に向ける姿はまるでいつもの“調査兵団団長”のエルヴィンとは程遠い。
元々持つ強い支配欲を素直に私に見せてくれているんだということが、嬉しい。
「――――君は被虐嗜好があるのか?」
「ない、よ……。」
「じゃあなぜそんなにうっとりと―――――嬉しそうな顔を、してる……?」
「――――被虐嗜好、じゃなくて………取り繕わないエルヴィンの心が見えた気がしたから―――――嬉しい、の……。」
「――――本当かな。」
意地の悪い顔で問う。そして一度重く、最奥を貫かれた。
「――――ひゃ……っ……ん………!」
目の前がちかちかと点滅する。
なんとか正気を保ちつつエルヴィンの目を見つめ続けると、ふっと笑って今度はとびきり愛おしいと、甘く甘く耳元で囁きながら身体を温めるように包んで抱き締めてくれる。
「よく生き延びた。偉かったな、ナナ。」
「うん――――………。」
私の頭を撫でて髪を指に絡めながら、また覆いかぶさって唾液を混ぜ合うようなキスをする。
エルヴィンのこのキスはずるい。
どうやっても抗えない。
なにも考えられなくなってしまう。
骨の髄までエルヴィンの毒がまわって―――――、捕食されるのを待つだけだ。
「――――なぜこんなにも君は俺を蝕むんだろうな、ナナ……。まるで―――――麻薬だ。」
「……うそ。」
「うそ、とは何だ。」
「麻薬はエルヴィンのほう、でしょ……。」
「俺が?」
「ずっと前からそう、エルヴィンの目に囚われて、その手に触れられたら―――――抗えない。指先から、いけない薬が、出てる……。」
「いけない薬?」
エルヴィンはふっと笑ってまた私の首筋に小さく幾つもキスを落として愛撫しながら、少年のような目で私を見上げた。