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【進撃の巨人】片翼のきみと

第107章 肯 ※





「―――――エルヴィン………?」



扉を恐る恐る少し開けて廊下に顔を覗かせると、遠くに小さくランプが灯るだけの薄暗い廊下で、隣の部屋のドアノブに手をかけた想像通りエルヴィンの姿があった。

ちらりと目線が私を捕らえたかと思うと、その目を見開いて足早にこちらに歩いて来る。

しまった、もう休みたいだろうに―――――……やっぱり大人しく寝ていれば良かったと小さく後悔しつつ、思わず扉を閉めようと軽くドアノブを引いたけれど、僅かな隙間に大きな手が差し込まれて、すごい力でぐん、と扉は開かれた。





「―――――エルヴィ……。」





彼の名を呼びきる前に、息が詰まるほどその腕に抱き締められていた。

目の前には見慣れたループタイ。

その表情を確かめるためにループタイを目で辿って首筋から彼の顔へと視線を上げると、その目は固く閉じられて、なぜだかとても――――――苦しそうだ。





「………おかえりなさい。」





小さく声をかけてその大きな背中に手をまわし、ぎゅ、と抱き留める。

不思議だ。

絶対に私が抱き締められている構図なんだけれど、私が受け止めている―――――そんな感覚になる。



ふとその腕が解かれたかと思うと、その大きな両手で両方の頬を包まれる。







「――――ナナ。」





「……はい。」





「……っ、ナナ………ナナ……っ……、………顔を、ちゃんと見せてくれ………。」





「エル、ヴィン……?……待って、ランプ点けないと見え………。」







あまりに余裕がない声でエルヴィンが私を何度も呼ぶから、慌ててランプをつけようとその場を離れようとしたけれど、それも許されない。

腕を引かれてまたその腕の中に囲われたかと思うと、身体が浮かんで気付けばベッドに運ばれて――――優しく、でも強引にその背をシーツに沈められて、見上げる先にエルヴィンがいる。

薄い三日月が仄かに差す月明かりの下で、私の前髪を優しくはらう指が、微かに震えていた。

その指の震えを止めるように、両手でぎゅっと包み込む。







「――――ここにいるよ。」







手を伸ばしてエルヴィンの髪をさら、と撫でると言葉に詰まった様子で、エルヴィンが私の胸に顔を埋めた。

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