第106章 危局③
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―――――トロスト区の壁を越えた瞬間に目にしたのは、巨人が大きな岩を持ってその穴を塞ごうとしているところだ。
どういう状況だ。
あの巨人は何者だ?まぁいい、考えるのは後だ。
俺はナナの姿を探した。
こういう揉め事の最前線にいるんだ、あいつはいつも。
不可思議な巨人はやがて穴を大岩で塞いだかと思うと動かなくなって、その付近の兵士を目がけて集まってきた巨人にどうやら手を焼いているようだ。
立体機動でその場まで向かう。
移動しながら目に入った。
――――ほらやっぱり、ガキどもを守ろうと刃を向けているのは、お前だろう。ナナ。
ナナ達に気をとられている2体の巨人の項を削ぐのは造作もなかった。
「――――おかえりなさい、リヴァイ兵士長………。」
「――――ああ、今戻った。ナナ。」
涙目で俺を呼ぶ。
生きていた。
その事実を理解した途端に鼓動が落ち着いて行くのがわかる。
エルヴィン、ナナは無事だ。俺を単騎で戻らせたお前の判断は正しかった。
ようやく一日が終わり、ハンジとミケに兵団を率いて戻らせ、俺とエルヴィン、ナナはウォール・ローゼ内の宿に泊まった。今回の状況をまとめて報告するためだそうだ。
さすがに疲れたな……と部屋のベッドに転がっていると、扉が鳴る。
「――――誰だ。」
「………私です、ナナです。」
「………あ?」
扉を開けると、あちこち擦り傷だらけのナナが立っている。
「御礼を言いに来ました、リヴァイ兵士長。」
「………任務の範囲内だ。礼には及ばない。」
「そうですか。でも、とても……安心しました。」