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【進撃の巨人】片翼のきみと

第106章 危局③




立体機動で巨人の死角に入り込むのは得意だ。

だって――――――私の師匠は凄かったんだから。

その時――――、目の前で立体機動で移動中の駐屯兵団の兵士が、突如下から伸びて来た巨人の手に囚われ―――――、口に、運ばれた。目の前で噛み千切られる兵士。咀嚼に合わせてだらんと垂れた手が揺れるその様に―――――、あの雪の日が脳裏に蘇る。



リンファ、リンファ……ねぇ私、強くなったかな。



あなたの死にもう、囚われない。



怯えてなにも出来ずに失うのはまっぴらだ。



怖くても、敵わなくても――――――戦え!!!





「ひっ……もう、無理ですよ……!退きましょう……!どうせこんな作戦、成功しない……っ!」





悲鳴のように呟いた駐屯兵団の兵士の横をすり抜け、兵士を喰らう巨人の目を切りつけて潰した。




「――――諦めない、最期まで………!!!」




その時、ずしん、ずしんと大きな地響きが鳴った。

エレンがいた方向へ目を向けるとそこには―――――大岩を持ち上げて、穴のある壁に一歩ずつ歩むエレンの姿があった。





「――――アルミン、やったんだね……!」





思わず涙ぐむ私を現実に引き戻したのは、凛としたリコさんの大きな声だった。





「――――エレンを死守!!!そうすれば私たちの勝ちだ!!!リコ班、続け!!!!」





リコさんの指示が飛ぶ。

一縷の希望に向かって、私たちはエレンの元に集まった。このまま守り切る。



そうすれば―――――人類は初めて、巨人に対して一矢報いることが出来るんだ。



でもそれはひたすらに残酷な光景の向こう側にしか、神様は用意してくれない。さっきまで一緒に戦った仲間が引き裂かれ、その頭が胴体を失う。



それでも、それでも――――――、戦え。



戦わなければ何も得ることはできない。



地に下りて巨人の気を引くアルミンとミカサに手を伸ばした巨人の目を両方向からリコさんと共に切り付けて、その視界を奪う。崩れ落ちるその瞬間にミカサが項を削いだ。

沢山の屍を積み上げてようやく、エレンは穴まで辿り着いた。







「いけぇぇぇええエレン!!!!!」







そして親友の奮闘を最大限後押しするようなアルミンの叫び声と共に、エレンがついに大岩で穴を―――――塞いだ。


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