第106章 危局③

エレンとミカサの奮闘を手助けしてくれる精鋭班や囮役を担ってくれている兵士達の各々の死闘に力を貸す事すら、近くで見届けることすらできずにただ遠くの壁上から、作戦成功の黄色の信煙弾が放たれることを祈って待つ。

けれどしばらくして放たれたのは―――――、血の色にも似た、赤い信煙弾だった。それは―――――作戦の実行に深刻な問題が発生したことを意味していた。

それでもピクシス司令は作戦の中止をせず、現場のエレンと精鋭班の判断に任せた。

いても立ってもいられなくなった私は、ピクシス司令に作戦への参加許可を求めた。





「―――ピクシス司令、私も行かせてください……！」



「――――ならん。」



「いえ、行きます……！」





私のただならぬ様子に、近くの駐屯兵団の兵士たちが私を取り押さえた。





「起こっている問題は高確率でエレンが巨人の力を制御できないということです……！あの子の世話はミカサとここにいるアルミン、そして私の役目………！私とアルミンを行かせることで問題を解決できる可能性が高まります！行かせない理由を……私は理解しかねます………！」





ふーーっと威嚇する猫のようにピクシス司令を睨み上げて訴える。





「………いつもの可愛らしいナナが嘘のように怖い顔をするのぅ。それはエルヴィンの影響か？」



「………はぐらかさないでください……！」



「――――お主が死んだ場合のエルヴィンへの言い訳を考えるのは億劫じゃ。生きて戻れよ。」



「…………。」



「行くがいい。」



「はい！！！！」





ピクシス司令の一言で私の拘束は解かれた。





「アルミン！！！行こう！！！エレンのところに！！！」



「はい！！！」





私はアルミンと共にエレンの元に駆けだした。