第106章 危局③
「――――ピクシス司令、もう一つご相談が。」
「なんじゃ?」
大岩のある場所の近くまで壁上を移動するエレンたちを見送りながら、もう一つ手を打つべきことをピクシス司令に提案した。
「私がトロスト区で確認しただけでも、相当な人が死にました。もしこの作戦が成功したとして、次に襲い掛かるのは―――――疫病の脅威です。」
「疫病、じゃと……?」
「はい。4年前のウォール・マリア奪還計画でも、大量の遺体から発生した疫病が一部蔓延しました。同じ事が、必ず起こります。」
「ああそうじゃ、そういえばその対策について検討をしているところだ。そう、君の弟の講義を儂も受けたぞ。」
「はい。まだ兵団内で疫病阻止の手筈が整い切っていないのでしたら、私の弟を指揮に立たせてください。」
「なに?それは願ったりじゃな。――――頼めるかナナ。早馬はこちらで手配しよう。」
「お任せください。私が手紙を書きます。早ければ明日には―――――来てくれるでしょう。」
「頼もしいの。ではお言葉に甘えようじゃないか。」
私の提案に、ピクシスは頷きながら微笑んでくれた。
そう、あの奪還計画の時と同じ事が起こる。
ロイの――――想定通りのことが。
だからロイの力を借りる。信じて頼っていい、頼もしい弟のことを。