第106章 危局③
作戦決行間際に、3人に声をかける。
「――――エレン、ミカサ、アルミン。みんな身体は大丈夫………?」
「――――ああ、見ててくれよナナ。必ず―――――穴を塞いで見せる。」
「――――うん………。」
「エレンは私が守る。」
「……ミカサも、さっき身体を強打してなかった?診ようか?」
自分のことをそっちのけでエレンを守ることしか考えない相変わらずのミカサのことも、やっぱり心配だ。
「ありがとうナナ。大丈夫。」
「そう……。アルミンは?」
「大丈夫です……ナナさん、さっきは―――――ありがとうございました。」
「ううん。やっぱりアルミンはすごい。この作戦でピクシス司令をも、動かしちゃうんだから。」
私が微笑むと、アルミンは謙遜するように、でもほんの少しだけ口角を上げた。
「――――必ず成功させる。」
エレンのその言葉に呼応するようにミカサとアルミンは手を重ね、3人はぎゅっと手を握り合い、その作戦は幕を開けた。
私は一緒には行けない。
エレンを刺激しないように拘束は解かれているものの、人質という立場は未だ解けていない。ウォール・ローゼの壁上から、トロスト区の壁上を駆けていく勇敢な兵士たちの背中を見送った。