第106章 危局③
人類の味方なのだとすれば大きな力だ。
けれど―――――戦争において確実に信じ切れるものなんてない、いつだって裏切りと謀略で国は傾く。
そんな歴史を人類は繰り返す生き物だ。
あの15m級の巨人は……あれを操っている人間は何を思い、どこに組みするんだろうか。
「人間、だとしたら……なにが目的なの………?」
とにかく考えながらも走ることをやめない。その時遠くに、待ち望んだ人の影が見えた。やっぱり来て下さった。
「―――――ピクシス司令!!!」
声を張り上げて叫び、ピクシス司令の元へ駆けつける。ピクシス司令は私を認識すると、片手を上げて応えてくださった。
「おお、ナナ。無事じゃったか。」
「……はい……っ……!状況は、どの、程度……伝わっていますか……?!」
「外門の破壊と巨人の侵入を許している、という概要だけだ。もしやお主、その後から今までの状況を把握しているのか?」
「はい!移動しながら全てお話します。」
「ありがたい。話せ。」
私はピクシス司令に現状をくまなく伝えた。
特に奇行種とも異なる別次元の動きを見せる15m級の巨人に関しては、事細かに報告をした。
「――――ほう、興味深い。」
「あ、あれです!今もまさに周りの巨人を攻撃して―――――。」
私が指を差した先には、両腕を失っても周りの巨人を滅しようと襲いかかる15m級の姿があった。
だがさすがに体力を使い果たしたのか、地面にうつ伏せに倒れ込んで―――――力尽きたように見えた。
「……もう少し観察したかったが、死んだか。」
「はい………。――――――え……?」
その巨人の亡骸から、項の部分から―――――、まるで巨人の傀儡の中から解放されたかのように姿を現したのは、間違いなくエレンだった。
「―――――エレン―――――――………。」
「……………。」
状況を理解できなかった。
まさかそこに家族同然のその子が―――――、死んだはずのその子が現れると思っていなくて………
呆然と佇む私を、ピクシス司令の鋭い目が捕らえていた。