第106章 危局③
別の区から来る移動の手段と、戦況を最も見極めやすいことを考えても通るのは壁上。必ずここを行けば、ピクシス司令に会える。それに、調査兵団の帰還もここからなら見渡しやすい。
一縷の望みを持って壁外に目をやるけれど、そこに彼らの姿はまだなく―――――次々に巨人がこの街を目指して歩いて来る、絶望的な情報のみにとどまった。
「エルヴィン団長………!リヴァイ兵士長……っ……!」
早く、どうか早く帰って来て。
こんなにも不安に押しつぶされそうだ。
エルヴィン団長の知恵と、リヴァイ兵士長の力があればきっとこの絶望的な境地ですら、希望を見いだせる。
そう信じてやまない自分がいる。
壁外を見下ろしていた目線をトロスト区内に再び戻すと、さっきまで絶望していた訓練兵のみんなが突然動き出した。
補給物資が眠る、巨人が群がる建物に特攻する気か。
先陣を切っている、あの群を抜いた動きは――――――――
「―――――ミカサ!?」
私が声に出した瞬間、ミカサがガス切れか、地面に吸い寄せられるような軌道で建物の間に消えた。
「―――――っ……!!!」
助けに行ったとしてもこの距離……私のガスも残り少ない。
片道で切れる。
助けることができない……!唇を噛みしめて拳を痛いほど握りしめていると、さっきの奇怪な動きをする15m級の巨人が、ミカサの目の前にいたのであろう巨人を殴り飛ばした。
アァァアアアアアァァァアァ!!!!!!
離れた場所にいる私にもはっきりと聞こえるほどの奇声をあげて、なおも巨人を踏みつぶす。