第105章 危局②
「――――ねぇ、まさか……。」
「……そのまさかです。壁を上りきれるほどのガスはもう残っちゃいない。」
「補給は……!」
ジャン君は、巨人の群がる兵団本部を指差した。
「――――補給する任務を負った奴らが戦意喪失したらしいです。ああやってあの中に……ガスと刃と共に籠城………巨人が群がってる。どうやって、取に行けって……?」
指さした先には、大小ふくめて10体以上の巨人が建物の中の人間を引きずり出そうと群がる姿。
とてもじゃないが―――――あんなところに突っ込むのは自殺行為だ。
「………そんな………。」
「――――くそっ……俺たちは一体、どうしたら……。」
拳を打ち付けるジャン君の他にも、数名の訓練兵はいずれも死を覚悟するしかないのか、といった苦渋の顔をしている。
現状を正しく理解しようと、再び兵団本部に群がる巨人の方に目をやる。相当な数だ。どんどん増えていく。確かに訓練兵数名で、勝ち目はない。
「――――私はまだガスが残ってる。私が、増援を呼びに行く。」
「ナナさん……?」
ジャン君が不安そうに座ったまま私を見上げた。
「駐屯兵団の指揮官のピクシス司令が、きっとこっちへ向かってる。おそらく、他の区からの兵を率いて来てくれる。現状を伝えて、必ず隊を動かしてもらう。それに、調査兵団のみんなも必ず戻ってくる。いち早く現状を伝えて、支援に来てもらう。」
「そんなに……待てるか、どうか……。」
「――――耐えて。生き抜いて。それしか―――――言えない……っ……!」
酷な事を言っているのは分かってる。
それでも、僅かにでも望みのある行動をしなければ、全員が死ぬだけだ。