第105章 危局②
「――――わかりました……!」
ジャン君は拳を握りしめて、ごくんと喉を鳴らした。
怖いだろう、震えるほどだろう。
この子達はまだ―――――15歳やそこらの、少年たちだ。
「―――――アルミン。しっかりして。あなたなら考えられる。今できる最善の行動は何?」
「――――――…………。」
アルミンの目の前にしゃがみこんで、目を合わせて語り掛けようとしても、大きく見開かれた瞳は私を映さない。
エレンを失ったその時の画を反芻しているのだろう、出口の見えない深い闇に取り込まれているように見える。
「あっちに――――……見たこともない動きをする巨人がいる。私たちに目もくれずに巨人を殺している。なんとかその力を借りてこの状況を打破できないか………考える余地はある。あなたなら、きっとできる………!」
肩を掴んでアルミンに話しかけてもなお、目も合わないまま呆然としている。私は自分でも驚くほどの大きな声と強い口調で叱責の言葉を放った。
「――――しっかりしなさい!!!!アルミン・アルレルト!!!!!自分の無力さに打ちひしがれるのは後でいい!!!!今出来る事を、あなたにしか出来ない事を考えなさい!!!!」
顔面蒼白で廃人のように俯くアルミンに強く言葉を掛ける。ほんの少しだけ、ビクッと身体を震わせて私の目を見た。
――――大丈夫、この子はきっとまた立ち上がれる。
「―――――エレンの死に意味を持たせられるかどうかは、生かされたあなたの行動にかかってる。」
「―――――………。」
その大きな瞳が涙に滲んで困惑に揺さぶられつつも僅かに光を持ったことを見届けて、私はその場を飛び立った。