第105章 危局②
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観察しては、記録を繰り返した。
なぜか巨人は、その15m級の巨人を敵と認識している。その15m級の巨人を食おうと、たかってくる。それでもその圧倒的な筋肉量と身体のこなしで周りの巨人をひたすらになぎ倒していく。
その姿はまるで―――――――巨人に対して怒っていると言っても過言ではないほどの怒気を纏っている。時折腕を立てて、その身を守るように顔の前に出して構えるのも、他の巨人にはまるで見た事のない動きだった。
「格闘術の―――――構えをとった…………?!」
ほぼ間違いなく、あの巨人の中身は人間だ。
中身と表現するのが正しいのか、操作している、と言うのが正しいのか。
―――――とても怖い。
でもなんだ、この興奮は。
「エルヴィン、とんでもないことが、目の前で起きてる……、戻ってきて、早く……!」
記録している間に、その15m級の巨人は次々に他の巨人を殴り踏みつぶし、蒸発していくのが追いつかないほど巨人の血に塗れた恐ろしいほどの力を、まざまざと見せつけられた。
一通りの記録をして、高い建物の屋根から周りを見渡すと、絶望したかのような訓練兵たちが頭を抱えて震えている姿を見つけた。
「――――ジャン君!」
「ナナさん。あのガキは、無事壁の向こうに届けましたよ。」
「ありがとう……!」
生き残った訓練兵たちにとって歓喜とも言えるはずの撤退の鐘が鳴った。
「撤退の指示だ……!住民の避難が完了した。行こう、私たちも―――――。」
「―――――………。」
彼らの表情は暗い。
呆然としたまま、誰一人動き出そうとしない。