第105章 危局②
「ちっ……ほとんどが街を目がけて移動してるが、中にはいるんだな……こっちに気が向く奴も。」
「………リヴァイ。」
「あ?」
「――――単騎で先に戻れるか。」
「――――……可能だ。」
これからまたおそらく二度三度は戦闘が始まる。そこにいちいち時間をとられるのが惜しいというわけか。
「ではガスと刃を補充して、先に戻れ。―――――死なせるな。」
「――――最初からそう言えよ。冷静ぶりやがって、素直じゃねぇな。」
「……素直な私は怖いだろう?」
「……まぁそうだな。」
「―――――命令だ。行け。」
「了解だ。」
俺はエルヴィンの元を離れた。
嫌な心地だ。
この先に、また地獄を見るのかもしれない。
エルヴィンの元を離れて単騎で駆ける間に、左翼前列のミケの班に追いついた。
「――――リヴァイ。先に戻るのか。」
「ああ。」
「懸命な判断だ。頼んだ。」
「――――エルヴィンを、頼む。」
「うん?」
「――――冷静ぶっているが―――――、おそらく気が気じゃねぇ。大博打に出やがったら、殴ってでも止めろ。今この時は、お前の冷静さの方が信用に足る。」
「―――――承知した。」
ミケが静かに頷いた。
それを見届けて今度こそ、最速で馬を走らせた。