第105章 危局②
「――――さすが、だなぁ……。」
自分の非力さに打ちひしがれるけれど、そんなことをしている場合じゃない。次に私に出来ることはなんだ。考えろ………!
とにかく現状を見渡しやすい場所へ―――――そう思って高い建物を確認した次の瞬間、どしんどしんと足音を立てて建物へ突っ込んできたのは―――――奇行種だ。
そして聞こえた、その声に反応した。
「待ちやがれ!!!!」
エレンの、声だ。
「よせ、単騎行動は――――――!エレン!!!!」
またカッとなってエレンが動いたのだろう、仲間の制止を振り切って飛び出したのは、エレンだ。
飛び出した瞬間エレンを下から待ち伏せていたかのように大きな口を開けていた巨人が―――――がちん、とその歯を鳴らした。その瞬間、遠目でも見えた。エレンの足から血が噴き出した。
「エレンーーーーーッ!!!!!!!!」
そのまま屋根の上に転がったエレンに急いで駆け寄る。エレンは左足の膝から下を―――――食いちぎられていた。
「――――――っ………!エレン、エレン……!」
私は無我夢中でジャケットを脱いでシャツの裾を刃で裂き、止血を試みた。ふと振り返ると、巨人につままれてまさに口に運ばれようとしているのは―――――、アルミンだ。
どうして、なんで、助けられない。
もっと私が強かったら、リヴァイさんみたいに、ペトラみたいに、私がもっと戦えたら―――――そんな事を思っても、その現実は覆らない。
涙すら出ない。泣いてる場合じゃない。
非力なりに、何ができるのかを考える。
決して諦めないことしか、私にはできないんだから。
――――その時、足を失ったエレンが起き上がった。その目は、どこを見ているのかもわからない。
「エレン!動いちゃ、だめ……!」