第104章 危局
「オ、オレは……人類の役に……立てた、でしょうか……このまま……何の役にも立たずに……ただ、死ぬ、のでしょうか……。」
その兵士の絶望に満ちたような声と共に、血に塗れた手が俺を探すように彷徨う。
―――――もう、目も見えてないのか。
仲間の死に直面する度に、あの日のナナの母親の言葉を思い出す。
“意味がないと生きることが辛いように―――――――死もまた、意味を持たなければ、あまりにも辛い”
その一瞬―――――ナナが、俺を呼んだ気がした。
お前もまた仲間の死を何度も何度も受け止めては意味を持たせて―――――、それを糧に、強くなってきた。仲間の死に意味を持たせるのもまた俺達の役目だと教えてくれた。俺は血に塗れた仲間の手を、強く握り返した。
「お前は十分に活躍した。そして……これからもだ。お前の遺した意志は俺の力になる。」
「…………リヴァ…イ……へい……ちょ……。」
「約束しよう俺は必ず、巨人を絶滅させる。」
仲間の屍に誓う。俺の使命を。
「……兵長……彼は、もう……。」
目を閉じて、呼吸も止まった。
「最後まで聞いたのか?こいつは……。」
「ええ……きっと聞こえてましたよ。だって……安心したように眠っています……。」
「……ならいい……。」
馬の蹄の音に振り返ると、エルヴィンが駆けて来る。発したその言葉に驚いた。