第104章 危局
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廃墟と化した町に差し掛かる少し前から、今回の壁外調査は骨が折れそうだなと思った。
巨人の数が―――――多い。
廃墟の町は、熟練した兵士にはアンカーを打てる対象が多く戦いやすいが、経験値の少ない新兵には酷だ。経験値から巨人が潜みそうな場所に当たりをつけられず、立体機動の移動中に建物の陰から食いつかれて死ぬ新兵も多い。
まさにその光景を、目の当たりにした。
汚ねぇ巨人の口から、上半身だけが見えた状態で、その兵士は諦めていなかった。最期まで抗って、己を捕食しようとする天敵の目に刃を突き刺した。
辛うじてまだその下肢をかみ砕かれてはいない。まだ、救えるかもしれねぇ。
ムカつく顔をした巨人に向かってアンカーを放つ。
「――――俺の部下に、なにしやがる……!」
ワイヤーを最速で巻き取りながら移動速度を上げる。速度が乗れば、完全にアンカーを回収してそのままの速度を斬撃に乗せる。次の瞬間にはもう――――項を削ぎ落としていた。
崩れ落ちるその巨人の口に咥えられていた新兵と目が合ったその顔は、“助けてくれた”と安堵の色を見せていた。
またこちらに向かってくる嫌な足音を聞いた。
建物の屋根から目視すると、右に一体と他の班が既に戦闘中、更に左に二体の巨人がこちらに向かって来ている。同時に、背後から立体機動の音を感じた。ペトラか。
「兵長!増援を集めて来ました!」
「お前は下の兵士を救護!残りの全員は右を支援しろ!!俺は左を片付ける!」
「えっ………!!」