第104章 危局
壁の破片がありえないほどゆっくりと見えた。
けれどそれは私の頭の中の情報処理が追いついていなかっただけで、理解した瞬間、急に速度を増して家々を吹き飛ばし、人々の平和を、暮らしを、命を、一瞬で消し飛ばした。
「きゃぁあああっっっ!!!」
立て続けに凶器が街に着弾する轟音と振動に、思わず耳を塞いで蹲った。
怖い。
震える。
私は今、1人だ。
仲間もいない。
死ぬの?一人で。
そんな後ろ向きな声が心の中に充満する。
まるで―――――幼い日に一人で雷鳴に怯えた日のように、無力な私は無意識に彼らを呼ぶ。
「―――――リヴァイ、さ………っ…!―――――エルヴィン………っ……!」
全ての壁の破片が地に落ちたのか、轟音は止んだ。自分を奮い立たせて体中の震えを止める。
「私に、できることを――――……やらなくちゃ……っ……!」
記録すること。
そして、人の命を救うこと。
私にできることなんて、限られているから。
でも、それだけは全うして見せる。
私だって戦う。
場所は違っても、いつでも彼らと共に。
胸ポケットからメモとペンを出して、その壁上の2つの目を確認しようと立ち上がって顔を上げてまた驚愕した。見上げたその超大型の巨人は、細く長い右腕を大きく振りかざし、壁上を一閃したのだ。
またもや激しい轟音と共に、吹き飛び散乱していくのは、壁上固定砲の数々。
自分に不利な武力をまず潰した。