第104章 危局
「ふふ。良かった、エレンにも仲間がいてくれて。」
微笑ましいなと思いながら、今度は壁門から壁に沿って東側を歩いてみる。トロスト区は区内の東側を南北に縦断するように水路が流れている。東側の壁をずっと北まで歩いてから、水路の橋を渡って、中央へ戻って―――――、ぐるっと、見て回ってみよう。
「――――紅茶屋さんとか、あるかなぁ。」
初めてしっかりと自分の目で、足で見ながら歩く街は新鮮で、ワクワクした気持ちで探検を続けた。
チラリと後方の壁上を見ると、ほんの小さくエレンが見える。
「――――頑張ってるなぁ、エレンも。私も―――――頑張らなくちゃ!」
そう声を発した瞬間。
目を疑った。
なぜ?
壁上に、2つの目がある。
「――――――え……?」
それがありえない大きさの巨人だと気付くまでに、一瞬がものすごく長く長く感じるほど、自分の頭の中を彷徨った。
けれど、その巨人と共に発生した蒸気にエレンと思わしき人影が吹き飛ばされたのを見た瞬間、危機だとようやく理解した。
「――――――エレン!!!!!!!!」
なんとかアンカーを刺して、壁に沿ってぶら下がっている様子が見える。落ちなくて良かった。
だけど、だけどどうして――――、
あれは何?
何が起こってるの―――――?
次の瞬間、耳をつんざくような轟音と地響きと共に―――――――、無数の凶器が八方に凄い勢いで吹き飛んできた。
これは―――――壁だ。
破壊された、壁の破片。
脳内の血液が一気に心臓に下る。
恐ろしいほどの現実を目の当たりにすると、思考は一瞬停止するんだと――――――生まれて初めて経験した。