第104章 危局
私は隊の内側の、リヴァイ兵士長の視界に入る位置に移動した。
その時にチラッと目をやると、大衆の中に喜々とした顔でこちらを見つめる、エレンとミカサ、アルミンの姿が目に入った。おそらくリヴァイ兵士長に向けているその好奇心溢れる眼差しは、やはりまだ少年を思わせる。
エレンが私に気付いた。またその表情がぱぁっと明るくなった。左手を少しだけ上げて合図を送ると、ハンジさんがそれに気付いた。
「あれ、ナナ知り合い?」
「はい、お話していた、エレンとミカサ・アルミンがそこにいました。」
「ええっ、どこどこ!」
「あれだろ……騒いでる……うるせぇガキ共だ。」
「ああ、あれか!可愛い子達だね。あはは、楽しみだなぁ!あの羨望の眼差しが、リヴァイの潔癖すぎる性格を知って幻滅に変わる日がさ?」
「………削ぐぞ、クソメガネ。」
エレンはハーネスを付けていた。
今日演習に当たっているのだろう。怪我をしないといいけれど……と、小さく母のような気持でエレンを見つめた。
いつものように門前で最終の確認を行う。
私もまた、医療班の子達一人一人に声をかけた。怯えている子も、もちろんいる。頑張って、しか言えない自分がもどかしいけれど―――――その恐怖と、困難をみんなが少しずつ乗り越えていく毎に、調査兵団は強くなるんだ。
次の調査こそは、私も行きたい。少しでも、みんなの力になりたい。
謎を解き明かすためのヒントを得たい。