第104章 危局
壁外調査出立の朝。
早朝だったにも関わらず、調査兵団の出立には多くの市民の声援が飛んだ。
「頑張って!!期待してるわ!!」
「エルヴィン団長!今度こそウォール・マリアを取り戻してください!」
「あぁ!リヴァイ兵士長だ!!人類最強の兵士!!巨人をぶっ倒してくださいね!!」
「どうか、どうか希望を……!!」
街中から多くの声援が飛び交う。
この声援は、年々大きくなっているように思う。そしてそれを感じたのは、私だけではなかった。
「いやぁ、随分期待されてるよね。年々声援が増してる気がする!これもさ、ナナが始めた翼の日で市民の理解を引き出してきたからじゃない?」
「――――ああ、そうだな。ありがたいことだ。」
「……みなさんの日々の努力の功績ですよ。」
ハンジさんとエルヴィン団長、リヴァイ兵士長が騎乗してゆっくりと門までの道を歩く。私は今回壁外に出ないから、その横をついて歩く。
ぎりぎりまで備品の準備や確認を少しでも手伝いたいから。
「おいナナ。」
「はい?」
ふいにリヴァイ兵士長に呼ばれて、彼のほうを見る。
「端にいるな。」
「えっ。」
「あぁ……リヴァイ、以前みたいに壁外調査直前にナナが攫われたら困るんだよね。」
「………当たり前だろう。また大捜索をやらせる気か。」
「素直じゃないなぁ。心配だから、視界に入るところに居ろって言えばいいのにねぇ?」
ハンジさんがケラケラと軽く笑う。
ああ、そういうことだったのか。相変わらずリヴァイ兵士長は言葉足らずというか……そうか、あの時――――、私を見つけてくれたのはリヴァイ兵士長だった。また攫われたら、それこそ大迷惑をかけてしまう。
「は、はい!」