第103章 850年
巨人の討伐数や討伐補佐数は、エルヴィン団長が団長に就任してから記録を始めたらしい。これにより、各々の兵士の能力値だけでなく、その兵士がどういった役割に向いているのかも見て取れる。
また、配置していた場所から巨人との遭遇率なんかも割り出せるため、非常に重宝している数字だ。
数字を積み上げようと、やる気を燃やす兵士も多い。
「はい、なにか……難しい任務でもあるのですか?」
「察しがいいな。咄嗟の時に動ける、リヴァイが直接指揮する班を作る。もちろん人選はリヴァイに直接させるが、数字の上でも整合性がとれるかどうか見たいと思っている。」
「リヴァイ兵士長の……班………。」
それはつまり、精鋭中の精鋭だ。
私の頭に、ふとあの日の――――――、私が王都へ帰る前の訓練場での出来事。オルオとペトラがリヴァイ兵士長の元へ駆けていく、その瞬間が浮かんだ。きっと強い絆で結ばれて、大きな成果を残す班になるんだろう。
「――――嫉妬か?」
言葉に詰まった私を見て、エルヴィン団長が意地悪な目線を寄越す。
「……そう、かもしれません。ほんの、少しだけ。」
「………正直だな。」
「――――でも、私は私にしかできない事をやります。――――意地悪で大人げない団長の右腕は、私にしか勤まらないかと。」
意地悪な目線にはもう慣れた。そつなく切り返すと、エルヴィン団長はは楽し気に笑う。
「――――言うね。まぁ、その通りだ。宜しく頼むよ、優秀な補佐官殿。」
そのエルヴィン団長の顔を見て、私もまた少し笑った。