第103章 850年
「ハンジさん、次の壁外調査でも巨人の捕獲を計画されていますが、捕獲できたらどんな実験をするかはもう考えていらっしゃるのですか?」
「ああそう、そうなんだよ!以前少し話しただろう?過去の捕獲時の実験について。あれを反復はしようと思うんだ。」
ハンジさんがキラキラと目を輝かして答えてくれる。
私たちは肩を並べて歩きながら、次の実験についての期待を膨らませた。
実験は嫌いじゃない。医学の道でも実験はつきものだから。
――――ただ少し、いくら巨人とはいえ人型をしている生き物に辛い事を強いるのは気が引けるところはあるけれど。それでも、誰かがやらなくちゃずっとこの謎は解明できない。そんな“誰かがやらなきゃ”を背負っているハンジさんの力に少しでもなりたくて、話が弾む。
「ええ、以前聞いたところだと、意志の疎通と日光の遮断でしたか。イルゼのメモに意思疎通が叶った例がありますし、興味深いですね。それに日光の遮断も……もし確実に日光のない夜間なら巨人は活動しないと証明できるなら有益です。あとはジャックの例ですか。」
「そうなんだ。ずっと頓挫していた、ジャックの“雄たけび”のような、仲間を呼びよせることができる巨人が他にも存在するのかは気になるところだよね。痛覚の実験の時にその雄たけびが上がるか………また、それに反応して壁外の巨人が動くかどうかも確かめたいと思ってる。」
「それなら、壁上に兵士の配置も必要ですね。そのあたりもエルヴィン団長に相談しましょう!」
「ナナが一緒なら心強いよ。手伝ってくれるの?」
「もちろんです!」
私が当然、と返事をすると、ハンジさんは少し照れたように、嬉しそうに笑ってから、小さく自分の気持ちを話してくれた。
「――――嬉しいな。」
「え?」
「こんな変わり者集団の調査兵団の中でも、特に私の巨人への興味は突出してるって自覚してるんだ。時には白い目で見られてることも分かってるし、――――まぁそれが辛いとかもないんだけど。私は私のやるべきことをやるだけだから。」
「……………。」