第103章 850年
「――――さすがペトラ。あなたは……本当にすごいね。」
「そんな。ナナさんに比べたら、全然ですよ。」
「――――私はどんなに頑張っても、ペトラのように戦えないもの。特に、今もう左手は刃さえ持てない。」
私が目を伏せると、ペトラはぐっと意を決したかのように私を見た。
「――――私、諦めません。」
「………?」
「リヴァイ兵長の“特別”になること。」
「………。」
「――――だから、ナナさんが持っているものは、力は、私も身につけたいんです。」
「――――そう……。」
意志の強い真っすぐな瞳に気圧されるように、私は目を伏せた。
「ナナさんは今幸せですか?エルヴィン団長の側にいて。」
「………もちろん。」
「――――良かった。」
ペトラはにこりと笑った。
私がその場に上がらないことを知って、心置きなくリヴァイ兵士長について行ける、その心を振り向かせるために頑張れる、とでも思ったのだろう。
ペトラのまっすぐさと、純粋さと、健気さは――――、時に酷だ。特に、私のように――――後ろめたいことがある人間には。
ペトラとの時間の後、会議室の一室で新生医療班の子達への救護実習を行った。次の実習の内容を思い描きながら廊下を歩いていると、ハンジさんが声をかけてくれた。
「ナナ、救護班の育成はどう?」
「覚えの良い子達ばかりで助かっています。次の壁外調査でも、さっそく活躍してくれるかと。」
「そうか、それはすごい!」