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【進撃の巨人】片翼のきみと

第103章 850年




年始の休暇も終えて、兵士達も帰って来た。

次の壁外調査も近い。みんな自ずと、訓練に力が入るようだ。医療班では私が不在の間主軸になってくれていたエミリーが去って、また救護に当たれる人材の育成を始めた。

私も私で立体機動からも戦闘からも遠ざかっていたから、早く勘を取り戻したくて練習に行きたい気持ちはあるけれど―――――、調査兵団として、救護に当たれる人材を次の壁外調査までに育てることが先決だ。私は主に団長補佐の業務と医療班の立て直し、そして新兵の受け入れ準備を重点的に担った。

毎日があっという間に過ぎていく。

そんな中で思いもよらない声がかかった。



「――――ナナさん。」

「ペトラ。」

「私にも、教えてもらえませんか。救護について。」



ペトラの申し出に驚いた。

だってペトラはその立体機動の機敏さと、的確な斬撃、なにより状況を察するのがいち早く――――、リヴァイ兵士長が一目置くほどの兵士だ。次の壁外調査でもリヴァイ兵士長に近しい隊で、活躍を期待されている。それを誇らしく思っているのだろう、訓練にもいつにも増して気合が入っているように見える。

医療班はどちらかというと戦闘に向かない兵士………戦闘の前線にはなかなか出せない子達に、活躍できる場を増やすべく人選しているから、とてもペトラは候補にすら入らなかった。



「もちろん。けど、ペトラは前線で戦える十分な力があるのに――――?」

「前線だから、怪我をする仲間も多いです……知っているに越したことはないので!」

「そうだね……、うん!じゃあ一通り教えるよ。」



私の話を、ペトラは一言も逃さず聞き入っては、メモを取った。実際に止血の仕方や骨折時の固定の仕方なども全て実技を含めてやってみてもらったけれど、やはり覚えも器用さも抜群だ。

私が教えられるようなことは、たった1時間ですっかり網羅してしまった。

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