第9章 欲望 ※
緊張が解け、恐怖から解放された途端、私はどうやら意識を失ったようだった。
目が覚めると、私とリンファさんは医務室のベッドに寝かされていた。
そっと横を見ると、リンファさんの目も開いていた。
私は意を決して、リンファさんに話しかけた。
「あの………リンファ、さん………。」
「………なに。」
「私のせいで………怪我をさせてしまって………申し訳ありませんでした………。私が、リンファさんを呼ばなければ………こんなことには……。」
リンファさんと目が合った。
「………あのクソ野郎に、最後まではヤられてないんだろ。」
「………はい。」
「じゃあ、あたしの怪我はムダじゃなかった。あんたを、ちょっとでも守れたんだから。」
私の目から、涙がポロポロ零れた。
「だから、『ごめんなさい』じゃなくて『ありがとう』って言ってよ。」
「………はい……っ………!ありがとう、ございました………!」
「………ん。………それとさ、あたし達同い年なんだ。だから、敬語もやめてよ。煩わしいからさ。」
「……じゃあ……あの……さ、リンファ………。」
「なに?」
「ずっと言いたかったの………あなたの……立体機動は、本当に美しい。素人の私でさえ、わかるほど…………。私は、あなたみたいになりたい。だから………この怪我が治ったら………私に、教えてもらえないかな………。」
リンファは驚いた顔をして、頬を染めた。
そのあとに、ふっと噴き出すように笑った。
「………見かけによらず、タフだね……。こんな事があって、こんな状態で、もう次の訓練のこと考えてんの?」
「………そうだよ。早く、追いつきたいもの。」
「………わかった。教えるよ。」
「約束………だよ。」
「うん………約束………。」
私たちは、そのまま深い眠りについた。