第102章 空想
「………マリアさん。」
「なに?」
「―――私はエルヴィンのことが好きです。」
「……本当に?」
「はい。」
マリアさんのベッドの脇の小さな椅子に腰かけて、その手をとって話す。
「まだあの子は大人とは言えない歳なのにとてもしっかりしていてね、それが自慢でもあり――――、心配でもあるの。」
「はい………。」
「利発で、優しい子なの。」
「はい。私も、そう思います。」
「――――心から愛している……。幸せに、なって欲しいと思っているわ。」
「はい。――――エルヴィンも、マリアさんのことを愛していますよ。」
「そう?嬉しい。」
「マリアさん、想像してみてください。エルヴィンが大人になって――――、多くの人の命を、世界を救おうとする立派な姿を。どんな風になっていそうですか?」
私の問いに、マリアさんは少し間を置いて目を閉じた。エルヴィンが大人になった姿を想像しているのかもしれない。
マリアさんの手を握る両手に、少し力を込める。
「………どうですか?」
「―――そうね、背はきっと高くなるでしょうね。私に似た蒼い目はその蒼の深さが増しているかもしれない。」
「アランさんに似ているところもありますか?」
「―――凛々しい眉と、鼻筋が通っているところかしら。ふふ、あの2人が並んでいるとね、そっくりだと思って――――愛おしさが溢れて来る。愛する人との間に生まれた、愛する息子。」
「―――素敵、ですね。」
「ナナさんもそのはずよ。」
「え……?」
思いもよらず私の話になって、驚いた。
マリアさんの真っ白になった髪に、窓からのやわらかな冬の陽射しが当たってキラキラと輝く。マリアさんは優しく美しく微笑んで私の目を見ながら、話してくれた。