第102章 空想
それから恒例の期末処理を終えて、約束どおりの酒盛りが行われて―――――驚くほどおおっぴらに飲んで騒いで、あろうことか団長室のあちこちで皆そのまま雑魚寝をするほど、普段の鬱屈とするほどの重責から解き放たれたお気楽な時間が、とてもとても楽しかった……のだけど、どうやら私は酔っていくつも失態を冒したそうで、しばらくはいたたまれない心地だった。
――――そして年が明けた。
貴重な休みはしっかり体を休めればいいのに、エルヴィンは決まって私の家まで送って、僅かなひと時でも家に帰りなさいと言う。でも今回は私が譲らなかった。
「―――マリアさんに、会いに行こう?」
「………いや、いいんだ。困るだけだろう?」
「困らないよ。だってもしかしたら、エルヴィンの小さい頃の話とか聞けるかもしれない。とってもワクワクする。それに、私に帰れって言うならエルヴィンも帰らないと不公平でしょ。」
「―――そうだな。」
強い意志を見せると、エルヴィンはふっと笑って、参った、という顔をする。
結局、マリアさんのお見舞いに行ってから私の家に一泊するということで、決着がついた。
マリアさんと会えることも嬉しいし、エルヴィンが家に来てくれると―――――、ロイもハルも喜ぶ。
お花を持って、マリアさんの病室をノックする。
「―――マリアさん、こんにちは。ナナです。」
「――――あら……。」
覚えてくれているわけがないと、思っていた。誰?と言われる覚悟で覗き込んでみた、エルヴィンと同じ鮮やかな蒼い瞳はエルヴィンと同じように目を細めて笑んでくれた。
「来てくれたの?ナナさん。」
「はい……!」
覚えていてくれた。
私はとても嬉しくて、にこにことしながら花を生ける。
私が一度2人で話してみたいと言ったから、エルヴィンはまだ病室にはいない。