第101章 愛情
「――――過去のことも、薬のことも――――言いたくないことだっただろう?――――教えてくれて、ありがとうナナ。」
ナナをまた強く抱くと、ナナは俺の首筋に顔を寄せて、すんすんと鼻を鳴らして、落ち着いたようにくたっと、頭を俺の肩に預けた。
彼女がこんな俺をまた赦して受け入れてくれたことに胸を撫で下ろしながら、少しの間身体を寄せ合った。
すると、ナナがまたぽつりと、話し出してくれる。
「――――ほんとはね、もうエルヴィンと顔も合わせられなくて、駄目かもしれないって思って――――……ここを、出た。」
「………そうか。」
「そしたら――――リヴァイさんが、ね。私の心を整えて、考えさせてくれた。だから、また私はちゃんとエルヴィンと向き合おうって思えて、逃げずにここに戻って来られた。」
「―――――……。」
驚いた。
――――俺は大きな思い違いをしていたようだ。
リヴァイは俺と共闘しているとは思っていたが、それでも虎視眈々とナナを取り戻す隙を伺っているんだと思っていた。だが、リヴァイの判断基準はあくまで“ナナが望むこと”の実現なのか。
自分の想いは二の次で、ナナが自分を求めれば持ちうるすべての愛情で応じて、ナナが俺を望めばそこに帰るように導く。
粗暴で自分勝手な振る舞いからは想像もできないほど、絶対的な献身で自己犠牲を厭わない愛し方だ。
――――ナナが惹かれるのも無理はない。
なんて強くて、揺るがない愛情だ。