第101章 愛情
「エルヴィンが言った、『飼われる覚悟があるなら、命を宿しても問題ない』って言うのは、そうかもしれないとも思って………。」
「――――………。」
「もし、エルヴィンが本当に望むなら―――――………。」
ナナが言いかけたその言葉に驚いた。
徹底して繋がれようとするんだな、俺に。
望むものは全て与えたいと思っているのか。
「ナナ。」
ナナの頬に手をやって、諭す。
動揺の色を濃くしたナナの目が、俺を少し怯えながら捕らえた。
「――――昨日の今日で全くもって説得力がないが、聞いてくれ。」
「――――うん……。」
「俺は嫉妬のあまり君を無理矢理支配したいと、しようとしたが――――、それは間違いだったと思っている。二度としないと誓う。だから――――、君は君の望む通りにしていい。君が今じゃないなら、俺のことなど無視していいんだ。」
「――――………。」
「君が従うように、俺がそうさせたのも分かってる。けれど本当はそんなことをしたいんじゃない―――――……。」
「――――………。」
言葉に詰まる。
情けない。
いつも自分よりもはるかに戦歴の長い、貴族や上官に歯に衣着せず饒舌に話せる俺はどこに行ったのだろう。
でも、伝えなければ。
ありのままの、俺の言葉で。
「君が大事だ………、君を愛してる………。共に生きることを強制したいんじゃない。君と一緒に考えて、君が笑っていられるように一緒に生きたいんだ。」
「――――………うん………わかった………。」
ナナは一言零して柔く笑むと、俺の手に頬をすり寄せて、小さな手を重ねた。
「――――薬を、飲むね。」
「――――ああ。大丈夫か?その薬で気分が悪くなったりはしないのか……?」
「――――大丈夫。しんどくなったら、エルヴィンにとことん甘やかして看病してもらう。」
ナナのその小さな我儘と微笑みに、どれだけ俺は救われただろう。
「ああ、もちろん。喜んで。」
「――――話せて、良かった………。」