第101章 愛情
「――――共に生きるって決めたから――――……少しの過ちくらい、一緒に越えて行こう?」
「―――――………。」
「でも、怖かった。すごく。」
「―――……すまない……。」
頭を垂れて謝ると、ナナはまたふっと笑って俺の髪を撫でた。
「私も酷いことしてるから、おあいこ。」
つくづく、敵わない。
「――――ナナ、思い切り君を抱き締めたい。」
「――――うん。」
手を伸ばすと、ナナもそれに応えて腕の中に収まった。その身体を強く強く抱く。ナナが俺の背中に手をまわして、ぽつりぽつりと、話し出した。
「――――一つ、ちゃんと話しておきたいことが、あって……。」
「――――なんだ?」
「――――エルヴィンの、ことが、嫌なんじゃないの………。」
「ん………?」
ナナの言葉の意とするところが掴み切れずに、問いかけると、ナナは震えた声で一生懸命に伝えてくれた。
「――――私、その……過去に、無理矢理…………望まない性行為を、された、ことが……あって………。」
「―――――………。」
「――――……自分だけのものに、するために――――……孕ませるって、言われて――――……中に―――――……何度も……。それが、怖くて、怖くて怖くて―――――……まだ、思い出すと身体が震える………。」
ナナの様子がおかしかったのは、それか。
俺はなぜ気付かなかった?
ナナのことなら、些細な仕草でも表情でも気付くはずなのに――――、そんなにも欲に凌駕されていたのか。
そして俺もそいつと同じ目的でナナを縛るために――――………。
最低のクソ野郎じゃないか。