第9章 欲望 ※
……そういえば、前回の壁外調査で彼は左腕の関節を負傷していたはずだ。さっきから、左腕をあまり使わないのはそのためだ。私はビクターさんの右腕を塞ごうとしがみつき、リンファさんから彼を離そうと試みた。
「だから………ムダだって……!」
ビクターさんが私の腹部を殴りつけると、私の身体は簡単に吹き飛ばされた。
「う………あっ………。」
腹部の痛みと、背中の強打により意識が朦朧とする。その上に覆いかぶさるようにして、ビクターさんは獣のような眼で私を見下ろし、私の身体を弄ぶ。
「もう我慢できない……っ!一つになろう、ナナ……!」
ビクターさんが目的を果たそうとしたその時、倉庫の扉が勢いよく開いた。
そこには、息を切らしたリヴァイ兵士長と、アルルの姿があった。その後ろにエルヴィン団長とハンジさんの姿が見える。私は安堵したと同時に、みんなに知られてしまった、と血の気が引いた。
「………おいビクター、これは一体どういう状況だ………?」
「…………クソ……ッ……。」
リヴァイさんが、問いながら歩を進める。ビクターさんも、観念した様子だった。
「ナナ!!!!!リンファ!!!!!」
ハンジさんとアルルが、私たちに駆け寄り上着をかけて抱きしめてくれた。
と、その時、
私の横で血しぶきと共に人の身体が吹き飛んだ。