第100章 楔 ※
――――あの頃のリヴァイさんが記憶の中に蘇る。
怖い人だと思った。
全く笑わなくて、面倒そうで、不機嫌で――――、でもいつも私を目で追ってる。
自分が守るものだと、そう思ってくれているのがわかった。
守られるということがこんなに心強くて、心地良いものだって知った時――――私は幼いながらに、確かに恋をしていた。
「――――…………。」
「―――エルヴィンを癒せるのもまた、お前しかいない。あいつが何をしたかは聞かねぇが――――……赦してやれるなら、その腕に戻るのもいい。お前の自由だ。」
「―――なんで、そんなに―――――………。」
身を削って、私を尊重して愛してくれるの?
そう聞きたいのに、胸が詰まって―――――声に、ならない。
「――――たまに歯止めが効かなくなることもあるが、これが俺なりの愛し方だと言っただろう。いつでもお前が望む時に、側にいてやる。俺を望まないならそれでもいい。―――――だが笑ってろ。それだけで俺は、なんだってできる気がする。」
――――その言葉に、声を上げて泣いた。
まるであの頃みたいに。
――――いや、あの頃の私は子どもだったのに、声を大にして泣くことなんてなかった。それはいけない事だと、思っていたから。泣くのなら、1人で――――その気持ちを処理するために泣く。決して、迷惑なんてかけてはいけないと思っていた。
その涙を誰かに受け止めてもらうこと。
それができるようになったのは、まぎれもなくリヴァイさんの、エルヴィンの――――、調査兵団のみんなのおかげだ。