第100章 楔 ※
「――――リヴァイさん………愛して、います………。」
両手で顔を隠して、とめどなく溢れる涙を拭いながら途切れ途切れに、言葉を紡ぐ。
もう何も、取り繕えない。
狡くても、汚くても、ただそのまま想いを伝えることしか、できない。
「――――ああ、知ってる。」
「――――でも――――、エルヴィンのことも、愛して、いるんです………。」
「――――それも知ってる。」
「――――私は何も、変われてない………。」
私の零した言葉に少し驚いたのか、リヴァイさんは頬の手を離して腕を組んで、何かを考えるように目線を下に落とした。
「変わらなきゃいけないことか?」
「……………。」
「我儘で強欲なお前のままでいりゃいい。」
「――――……だっ…て……、私が、どちらも愛して、しまっている、から………諦められないから――――苦しい、想いを――――させてる………。」
「―――まぁ確かに苦しいがな。ムラムラさせといて、我慢しろとか言いやがるからな。」
「……ほら……やっぱり、私は――――いない、ほうが―――――……。」
「俺の中からお前を消し去るくらいなら――――、この苦しみの中にいるほうがずっといい。」
リヴァイさんはなんでもないことだと、当たり前だと言うようにその言葉を並べた。
「――――………おかしい、ですよ……。」
「だから言ってんだろ。俺はとっくにおかしい。―――――12年前からずっとだ。」