第100章 楔 ※
「――――なにか、されたんだろう。珍しく――――感情を出してやがったからな。」
「来ないで………っ……。」
胸元のシャツの破れを隠すように、自分の身体を守るようにぎゅっと身体を縮めて、リヴァイさんを牽制した。
「―――――あ?」
「大丈夫、です……っ………。」
「――――あぁ、このやりとりは前にもあったな。」
「――――………。」
「――――お前の様子がおかしいのは―――――、俺が大丈夫じゃねぇんだよ。」
距離を詰められる。
逃げなきゃ、そう思うのに足が付いてこない。
うまく動かせない。
リヴァイさんの腕が伸びて――――、私の手首を掴んで、その胸元を暴いた。
リヴァイさんは目を見開いて、引きちぎられたボタンや、新たに付けられた痣を見つめた。
「――――あのエルヴィンが、ここまでやるのか………。」
「――――私が、ふらふら、してるからです……。早く、リヴァイさんのことを忘れて、早く――――気持ちも整理しなきゃ、いけなかったのに―――――できない私が………エルヴィンを……あなたを、傷付けてるんです………。」
「――――辛いのか。」
リヴァイさんの目は静かで、包み込もうとしてくれているのがわかる。でも、甘えるわけにはいかない。
「――――辛い、どころか………。」
「――――あ?」
なんとか笑って見せる。
「大好きな2人にこんなにも激しく想われて―――――、身に余る、幸せ、です。」
「――――ならなぜ泣く。」
「――――なぜ、でしょうね……。」