第100章 楔 ※
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ふと思う。
別れた後もお父様を――――心のどこかで愛し続けていたお母様を、ショウさんはどんなふうに愛したんだろう。
愛せたんだろうか。
お母様の全てを。
お母様が言った、“過去も含めての私を愛してくれているのではないかと思う“というのは、その想いが強ければ強いほど、残酷だと思う。
エルヴィンがこれほど私の中のリヴァイさんに乱されるのは、それだけ――――私の事を愛してくれているから。抱ければいい、くらいに思われていたなら、こんなに苦しんだりしなかっただろう。
息苦しいほどの口づけは、酸欠になってしまうかと思うほど長く、エルヴィンはちっとも私を離してくれない。
エルヴィンの上に跨るようにしていた体勢から、簡単に抱き上げられて、私室のベッドに降ろされる。
本当にここで、飼われるのかな。
……あの時の―――――ロイに繋がれたあの日々を思い出すと、ほんの少し怖い。
けど、エルヴィンだから。
例え繋がれても、自由を奪われても、いい。
そう思える。
「――――ん、は……っぁ…、エル、ヴィン……苦し……い……。」
「――――足りない。もっと……息ができなくなるほど、欲しい。」
「――――ふ……っ……、ぁ………。」
水音を鳴らして、舌を絡め合ってお互いを探り合う。
精液を飲んだ口で―――――、嫌じゃないかな……なんて小さい不安は早々に吹き飛んで、気持ちよさにうっとりと溶かされてしまう。
ようやく少し満足したのか、エルヴィンが唇を離してくれた。至近距離で目を開いて見た彼の表情は、先ほどまでの昏く冷たいそれとは違う、いつもの彼だ。
逞しい両腕が、強く強く私の身体を抱いた。
「――――エルヴィン………?」
「――――本当は物理的に閉じ込めるんじゃなく、君の心を捕まえたい。」
「うん………。」