第100章 楔 ※
「私のことはいい……!淫らで、どうしようもない、けじめもつけられない女だって軽蔑していい……嫌いになるなら、それでもいい……。でも、でもリヴァイさんのことは―――――」
「――――それが最高に勘に障るんだ。」
エルヴィンの鋭い目線が刺さる。びく、と身体が震える。
「――――俺は君を離す気はない。リヴァイに君を抱かせる気もない。」
「――――………。」
「――――君がその気なら、俺も相応にせざるを得ない。―――――しっかりと躾けておかないと。――――逃げないように。」
エルヴィンの目が、いつになく深く昏い闇を宿す。
知らない人みたいだ。
ずっとずっと我慢させていたんだろう。もともと完璧主義な彼が、半分心を他に置いて来たような私に満足するはずがなかったのに――――、ここまで、譲歩して耐えてくれていた。
それを踏みにじるのは、いつだって私だ。
「――――君は俺に後ろめたいことがあると、俺に酷い扱いを受けることを望むんだったな?」
「――――………。」
「さぞかし後ろめたいだろう、ナナ。この身体に――――俺のものに、こんな印を――――、他の男の匂いを付けて帰ってきて。」
「―――……は、い………。」
「――――言え、ちゃんと。どうして欲しいか。」
「――――ひどく、して………。めちゃくちゃに、して………ください………。」
「はは………。良い子だな、ナナ。――――わからせてあげよう、君が誰のものか。嫌と言うほど。」