第100章 楔 ※
「――――ごめんなさい………。」
「――――まだリヴァイを愛してるんだな?」
その問いに、俯く。
無意識に自分の唇に指先が触れた。自分の今の心情を客観的に見ても、どうしても認めざるを得ない。
「――――………愛してる………。」
「――――時折君が自分の唇に小さく触れるその仕草がとても可愛くて好きだったが――――、それはリヴァイとのキスを思い返している時の仕草だろう。」
「――――………!」
―――気付かなかった。全く。
「俺を愛していると言いながらリヴァイに唇を許して、肌を許して――――、俺が何も思わないとでも?――――こんなに、君に焦がれている俺が。」
「――――………。」
何も、言えない。
「さっき俺があの扉をノックしていなかったら――――、君は今、リヴァイの下で悩ましく鳴いていた。俺のものだと言ったその心を、身体を、簡単に差し出して。もっと、もっとと欲しがって――――リヴァイに何度もイかされながら、交わっていたんだろう。」
「―――そんなこと……っ………、リヴァイさんが、するはずない………。」
そう。私がどんなに、いっそ抱いてくれたらいいのにとすら思っても、決してそれ以上を求めない。
口では脅し文句のように言うけれど、確固たるものとしてそれを守っているのは、私だけじゃなく―――――エルヴィン、あなたのこともリヴァイさんは大事にしているからなの。
「――――信じろと言われて信じられると思うか?この状況で。」
エルヴィンの蒼い目が冷たく凍り付いたように見えた。
でも、リヴァイさんのことは誤解しないで欲しい。
エルヴィンのところに私が帰れるように、最後の一線は絶対に越えない。そう、共に“夢”を見たあの夜も―――――そうだった。