第99章 陽炎
「ちゃんと受け止めるから……自暴自棄にはならないから……。話してください。お願い……。」
バラバラの書類の上に横たわった私に覆い被さって、私から目を背けて伏せた。そしてリヴァイ兵士長は小さく話し出した。
「――――あいつが俺を欲しがるあまり、中央憲兵の口車に乗って――――利用されて殺された。俺があいつをけしかけた結果になっただけだ。お前の身代わりに死んだわけじゃない。」
「――――リヴァイ兵士長を欲しがった……?」
「――――そうだ。俺が一切応えなかったからだ。過激な行動に走らせたのは俺だ。――――一度くらい、望み通り抱いてやれば良かったのか……?俺の……くだらねぇ意地のせいで、アリシアは死ぬ羽目になった。」
リヴァイ兵士長が苦しそうに、目を伏せたまま呟く。
私の両腕を押さえつける手に、力が込められる。
――――アリシアのあの言葉は、翼の日のあの言葉は虚言だったのか。ペトラを威嚇したかったのか。
「――――下らない意地って、なんですか。」
「――――お前がそれを言わせるのか?」
「私には言えないようなことですか。」
「お前にだから言えねぇよ。分かってんだろうが。」
「わかりません。」
「――――イラつくな、ナナ。お前の口ぶりがエルヴィンに似て来てるところも腹立たしい。泣かせたくなる。お前のその――――、俺がアリシアを抱いていなかったことを知った安堵しきった顔を、ぐちゃぐちゃにしてやりたくなる。」
「――――……物騒ですね、相変わらず……。」