第99章 陽炎
「本当のこと、教えてください……。」
「お前に言うべきことはなにもない。」
「うそ。」
「あ?」
「私のせいで死んだんでしょう、アリシアは……。」
「いい加減にしろ。」
「それに――――。」
「――――ナナ、黙れ。」
「―――――その腕で抱きしめて、その声で“可愛い”って――――――………アリシアの名前を呼んだんでしょう―――――?」
何を言ってる?私は。
だから何だ。
リヴァイ兵士長が誰と何をしようと、何を言おうとも関係ない。
それに――――、私がここに来たのは、アリシアが私の身代わりとして死んだとしたら、その事実を知っているリヴァイ兵士長に真実を聞きたかったからだ。
なのに私は―――――、翼の日の夜からずっとこの胸にこびりついていた想いを、ぶつけてしまった。
こんなことを言いたいんじゃない。
こんなことを聞きに来たんじゃないのに。
元より私にはそんなことを言う権利はない。
リヴァイ兵士長は物凄く苛立った様子で机越しに立ち上がって、私の胸ぐらを掴んで引き寄せた。物凄い力で、簡単に体が引きずられて、がたん、と大きな音を立ててその机の上に引き倒された。
苛立ちを含んだ目で私を見下ろしながら、抵抗できないように両手首を押さえつけられて―――――机の上の資料がバラバラと、次々に落ちていく。
「――――お前は何が言いたい。何がしたいんだ。」
「――――……わからない……。ただ、アリシアを死なせたのが私なら―――――、ちゃんと、教えて欲しい………。今傷つかないようにすることが守ることじゃないって、リヴァイ兵士長が…………言ったんですよ、昔……。」
「――――違う。アリシアの死はお前に関係ない。」
「――――その手紙に書いてありました。読んでみたらどうですか?」
「―――――………。」
リヴァイ兵士長が目を見開いた。肯定の顔だ。
私のこんなその場しのぎの嘘を見抜けないあなたじゃないのに。あなたもどこか、焦燥しているのか。