第9章 欲望 ※
「ねぇ……好きだよ……。」
「ん………ううぅっ……ふぅっ………!」
角度を変えて、何度も口を吸われる。
今までに感じた事のないほどの不快感。
無理矢理口の中に侵入してくる舌は、私の舌を絡めとって、まるで生き物のように私の中で蠢く。身の毛がよだつほど不快だった。
「……はぁ……っ……かわいい………かわいいよ………ナナ……っ……!」
私は、再び侵入してきた舌を思い切り噛んだ。血の味が口に広がる。ビクターさんは少し怯んで、唇を離した。
「このっ………くそっ!!」
今までに経験したことのない衝撃とともに視界が一瞬途切れ、私の口の中が血で溢れる。ビクターさんの拳が、私の頬を打ったのだった。
理解するまでに、時間を要した。
怖い。痛い。怖い。痛い。怖い。
ただ、それだけだった。
私は紐の切れた操り人形のように、ただその身を任せて恐怖に耐えるしかなかった。